『地上5センチの恋心』
『地上5センチの恋心』(2007年)を観た。エリック=エマニュエル・シュミット監督。出演はカトリーヌ・フロ、アルベール・デュポンテルなど。
デパートの化粧品売り場ではたらくオデットの唯一の楽しみは、ロマンス小説を読むこと。作者バルタザールのサイン会で、オデットは思いを込めた手紙を彼に渡す。
バルタザールは新作を批評家に酷評され、しかも妻が浮気をしていることを知り、すっかり落ち込んでいたところ、ふとオデットの手紙を読み、自分という存在を全面的に愛してくれる読者がいることに感動し、すぐさまオデットの住処にまでやってくる。憧れの作家が自分を頼ってきたことに戸惑いながらも、オデットはバルタザールを受け入れ、持ち前のバイタリティで彼を癒してゆく……。
名声と才能と金銭という、すべてを持ち合わせていながらも、真の愛に飢えている男と、平々凡々の生活を送りながらも、真に人を愛することのできる女。このモティーフを支えているのは、わりと陳腐な二分法的紋切り型である。上流階級の空虚な「みせかけ」の生活と、大衆の歓びあふれる「ほんもの」の生活。
「みせかけ」を壊された男が、「ほんもの」のバイタリティをもつ女に触れ、生命力を賦活されて、再び「みせかけ」の世界で生きてゆく力をえる。これは神話的な再生の物語であるといってよい。オデットは巫女のごとく元気に歌い、かつ踊る。歌と踊りという、この映画のミュージカル的要素は、まさに再生の神話的儀礼に不可欠な要素にほかならない。


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