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October 20, 2008

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)を観た。出演は佐藤江梨子、永作博美、佐津川愛美、永瀬正敏ほか。吉田大八監督。

女優を目指して東京に出ていった姉が帰ってきて、気弱な妹を理不尽にいじめるのだが、妹は妹で、過去に姉をネタにホラー漫画を書いて雑誌に掲載され、姉に心の傷を与えたという負い目から、姉に反抗することもできず、ただただ忍従する。腹違いの兄もまた、姉だけを愛するという誓いを過去に立ててしまったため、あまり姉に強い態度を取ることができないでいる。

そうした傍目には姉への過度な甘やかしとみえる不可解な状況を、東京からやってきた苦労人の兄嫁が戸惑いながら眺めているなかで、姉が東京に出した映画監督へのファンレターをめぐる顛末、姉による妹いじめのエスカレーション、東京から追ってきた借金取りへの対処、などなどの出来事が展開し、ついには妹による大逆転の結末を迎えるというのが話の流れ。

すべてを他人と運のせいにし、自分の非や素質のなさをまったく認めない姉の、爽快なまでの傲慢と理不尽さが、田舎を背景に圧倒的な違和的存在感をみせる、手足の長いスレンダーな容姿と妙に調和している。手足の先まで十全に統制できず、みずからを持て余しているようなサトエリの気怠げな身体が、その放恣さと裏腹にある苛立ちを、そのまま物的に表示しているようなのだ。

それと対照的なのが、小柄でありつつキビキビと動く兄嫁の身体である。夫の乱暴に耐え、姉の気まぐれな要求に応じ、周囲に気をめぐらして、求められた仕事を可能なかぎり効率よくこなすことで、自分の居場所をようやく確保できると信じる兄嫁は、つねに背筋を伸ばして姿勢よく、さっと立ち上がり、座り、用事に走ってゆく。

兄のほうは痩せ形ながら動作が緩慢なのだが、そこには、一家を背負い、過去を背負い、運命を背負っている男の寡黙な屈託が、あますところなく体現されている。

そしてマンガを唯一の趣味とする妹だが、姉の目を避けるよう、首をすくめ、肩をすぼめ、背を丸くして机にかがみ込む姿は、姉の非道な仕打ちに耐えながらも、そこに避けがたい魅力を認めて、悪いと思いつつもついマンガに仕立ててしまう、暗い欲望を抱え込んで育てる親鳥のようでもある。

というわけでこの映画は、統制できない放恣な身体、仕事をこなす機敏な身体、重荷を負う緩慢な身体、そして暗い欲望を抱える縮んだ身体、という、四つの身体が互いに重なり、衝突し、触れあい、共振し、あるいはすれ違う物語として読むことができる。

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